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狼に囚われた姫君の閨房録
第27章 下手人は原田?
「おはようございます」
お粥の土鍋を廊下に置くと、私は総司の病室に声を投げた。
微かな衣ずれの音がしたが、返事はない。
構わずに、私は襖を開けた。
総司は布団に身を起こしていた。痩せ細った蒼白い顔で、私を一瞥した。
「何か用?」
「朝餉を持ってまいりました」
「欲しくない」
「昨夜も手をつけなかったと聞きました。力がつきませんよ」
「食べたくないの!僕の面倒はみなくていいって言ったよね」
「左之助兄上さまに言われたんです」
私は総司の額に手を伸ばした。総司はすかさず身を引いたが、一瞬、私の方が早かった。
「微熱ですね。お粥を食べた後、薬湯を煎じましょう」
総司は長い吐息を洩らした。
諦めたのだろう。私がお椀にお粥をよそうと、木の匙で少しずつ食べ始めた。
「左之兄さんは奉行所に行ったの?」
「はい、坂本龍馬が暗殺されたとかで……」
「お上も笑わせてくれるよね。新選組なら、堂々と襲うのにさ」
「歳三兄上さまも、そうおっしゃっていました。疑いはすぐ晴れるから、案じるなと」
急須から湯呑みに私はお茶を入れた。
「そうだね。何事もなく、戻って来れるといいね」
湯呑みを両手で包むように、総司は独りごちた。
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