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狼に囚われた姫君の閨房録
第30章 総司、危篤に陥る
雪が音もなく降り続ける。大阪城は誰もが眠りについていた。
私以外は……。
「……兄上さま」
昏々と眠り続ける総司に、私は呼びかける。返事はない。
黄泉比良坂を彷徨っているのだろうか?
暗がりに、蒼白い総司の顔がくっきりと浮かぶ。瞼が強く閉じられ、薄紫色の唇が歪んだ。
総司の腕が空中をさまよう。何かを探すように。
私はその腕をギュッと掴んだ。
細かった。冷たくて氷のようだ。
私が思わず腕をさすると、
「……さ……む……ぃ……」
総司の掠れた声がした。
体は小刻みに震え、歯がカチカチと鳴っている。
身を切るほどの北風が大阪城に吹き付けている。火鉢では追いつかない寒さである。
温めるには、人肌がもっともいいと聞いた。
私は着物をすべて脱ぎ捨てた。
布団を捲って、そっと滑り込む。総司の背に手を回して、ぎゅっとしがみつくようにした。
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