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狼に囚われた姫君の閨房録
第31章 新選組、敗走
東の空が白みつつあった。カモメの鳴き声が船室にまで届く。
凪いだ海上を富士山丸は静かに進んだ。
山崎烝は作り付けの寝台で、荒い呼吸を繰り返していた。
「……ぅ……くっ……」
首筋には冷や汗をかいており、熱は高くなる一方だ。
山崎烝が撃ち込まれた弾丸は全て摘出できなかった。膿んだ傷口にずっと苦しみ続けている。
包帯を換えて薬湯を飲ませるしか、私にやれることはない。
「……姫……君……」
掠れた声が私を呼ぶ。私は山崎の口元に耳を寄せた。
「……なんでしょうか?」
「お伝えしたいことが……」
山崎は苦しい息の下から、言葉を絞り出す。
「俺には死してなお守りする力はなく……真実を告げる役目を……大老より仰せつかって……」
私は無言で頷いて先を促した。
「……姫君は阿修羅の魂を宿しておられます」
「……!?」
「……それはこの世を滅ぼす力があり……目覚めた時……日本は闇と化す……」
私は息を呑んだ。唖然とするくらい、荒唐無稽な話だが……。
「姫君は目覚めてはおられないものの……危うい状態に……」
「……何故ですか?」
「瀕死の沖田組長を死の淵から甦らせたとか……」
それがいけなかったというのか?
「運命の歯車は逆に回すことは許されない……それをしうる者は人にあらず……」
大きな波がきたのか?船がぐらりと揺れた。
「……姫君の優しさは命取りに……我らは姫君を守るために集いし者たち……何卒、お心にかけてくださらぬよう……」
「何があっても構うなと……?」
「……それが日本のため……姫君のおんため……」
山崎烝の言葉はかけらも理解できなかった。
できるわけがない。
どうして、私が兄たちを救ってはダメなのか?なぜ、それが日本を滅ぼすことにつながるのか?
追及したかったが、すでに山崎烝は返事をしない骸となっていた。
役目を終えたとばかりに……。
(山崎どの……ご苦労でした)
私は手を合わせると、船室をそっと出た。
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