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狼に囚われた姫君の閨房録
第34章 近藤勇、処刑
東の空が明るくなり始めたころ。私は馬を駆って、板橋の新政府軍・総督府本部を訪れた。
「開門!開門なされませ!!」
馬上から叫ぶと、門番が二人走り出てきた。
「何者か?名乗れ!」
一人が槍を突きつけたが、
「無礼者!」
私は鞭でそれを打ち据えた。
「私は元大老・井伊直弼が息女すみれ!慶喜公よりの書状を携えております。総督どのに取り継がれよ!!」
「慶喜公の書状だと?見せよ」
「下がりゃ!慶喜公は退位した身とはいえ、征夷大将軍。雑兵には触れさせぬ!!」
騒ぎを聞きつけて、門の中から何人かが出てきた。その中に肩や胸に勲章をつけた漢がいた。
「我は薩摩藩の香川敬三。慶喜公の文を持参されたと?」
私は馬を降りると、一礼した。
「お初にお目にかかります。井伊直弼が息女・すみれにございます。慶喜公よりのお使いで参りました」
「そなたがすみれ姫か。西郷どのより聞き及んでおる。利発で気の強い姫であったと」
「お恥ずかしい……お通しくださいますでしょうか?」
「慶喜公のご使者となれば、門前払いもできますまい。入られよ」
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