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狼に囚われた姫君の閨房録
第35章 総司と左之助の死
【第三者視点】
「おまえ、何しに……」
左之助が呆然とした。今にも夜風に倒れそうな総司がいた。
傍には、総司に肩を貸して腰を支えている少女。薄闇の中で、凛とした顔つきが映えていた。
すみれだ!
「何で、すみれまで!相馬や野村と一緒じゃなかったのか?」
「ご存知ということは、どこかで見ていたのですね」
目を丸くする新八に、すみれはクスッと笑った。
「主計くんと利三郎くんは私を総司兄上さまの元に送り届け、新選組を追いました。死に損ないたくないと」
「死地に赴く戦士だよね。幕府が負けるとは決まって……あ、決まったようなものか」
総司が含み笑いをした。やや咳き込み、背中を丸める。
「お父さんの首を盗むなら、僕たちも協力するよ」
「何、冗談言ってんだ?おまえは刀を振れる状態じゃ……!」
「死にてえのか?」
口々にいう左之助と新八だったが、
「どのみち、助からないよ。せめて、死に花を飾らせてくれないかな?恥ずかしくない働きをしてみせるから」
総司は軽く手を振った。
総司は顔面蒼白。立っているのも、やっとのようだ。
なのに、戦いたいと言う。武士として、どうしてダメだと言えようか?
「わかった」
ややあって、左之助が呟いた。
「先陣は俺と新八が切る。すみれは総司の護衛に回れ!絶対、無理するんじゃねえぞ」
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