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狼に囚われた姫君の閨房録
第35章 総司と左之助の死
【第三者視点】
「ゴホッ!ゴホホッ!!」
総司は激しく咳き込むと、地面に突っ伏して背中を丸めた。
襲いかかる薩摩藩士。総司は背中を丸めたまま、脇の下から刀を繰り出し、藩士の喉元を貫いた。
「総司!大丈夫かっ」
二人まとめて槍で薙ぎ直してから、左之助は叫んだ。
「なんで、残ったんだよ?戦う力なんか残ってねえくせに!」
総司はクスッと笑って立ち上がる。
口元は血で染まっている。その姿は幽鬼の如し!
「愚問だよ……この僕に畳の上で……死ねっていうの……?」
「救いようのねえバカだな」
「……兄さんこそ……この状況……生きて帰れると思うわけ……?」
「まぁ、無理だな」
薩摩藩士の応援は十有余人に上る。しかも、全員、銃を備えている。突破は不可能であろう。
左之助は鉢金を締め直し、槍を担いだ。
「そろそろ、逝くぞ。時間稼ぎはもう充分だろ」
「了解……」
総司は二本の刀に手を縛りつけると、駆け出した。
「新選組一番組組長・沖田総司、参る!」
「同じく、十番組組長・原田左之助。命がいらねえやつ、かかってこいよ!!」

銃声は四半刻(三十分)も続いただろうか?
生きている薩摩藩士は一人もいなかった。
総司と左之助も、蜂の巣のように撃たれて事切れていた。
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