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狼に囚われた姫君の閨房録
第38章 鶴ヶ城の悲劇(中)
慶応四年八月二十三日。
鶴ヶ城の戦いの火蓋が切られた。民家が散らばる城下を新政府軍が埋め尽くす。
空は蒼く、皮肉なほど美しい。ふだんは鬱陶しい蝉時雨が気にもならなかった。
大手門も裏門も閉ざされた。狭間に弓や銃の隊が配置され、百人以上の女たちは広間に集められた。
「決戦の時がきました」
私は女たちに訴えた。皆、鉢巻を締め、襷をかけた袴姿である。
「命が惜しいものは遠慮はいりません。今のうちに落ちてください。女に無体なまねはしますまい」
「お言葉を返しまする!」
西洋銃を小脇に抱えた山本八重が立ち上がった。
「この中に命を惜しむものはいません。みな、会津に命を捧げた身。軽く見てくださいますな」
「八重さまのおっしゃる通り。女の意地を見せてやりましょうぞ!」
中野竹子もキッパリと言い切る。二人とも男勝りで、剣の腕は男にも負けない。
(さすがは会津の……)
『会津藩こそは武家の鑑』
実父の井伊直弼が褒め称えただけのことはある。
「言わいでものことを言いました。これより、指示を与えます」
私が声を大きくすると、みな、居住まいを直した。
「直ちに、炊爨の準備に取り掛かりますように。全員分のおにぎりを作ってください。怪我人に備え、清潔な布をあるだけ集めること。すべての桶に水を張り、砲撃に備えるのです」
次に、私は竹子を見た。
「竹子どの」
「あ、はい」
「そなたは有志を募り、娘子隊を組織してください。後衛として、城の守りを固めますぞ」
敵が城に乱入したら、応戦せねばならない。決死隊ということだが、竹子はあっさりと承諾した。
「役目、光栄に思います」
「八重どの、そなたは…」
私が言いかけると、
「殿方の援護射撃をするのでございましょう」
八重は銃を構えてみせた。
「お任せくださいませ」
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