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狼に囚われた姫君の閨房録
第43章 修羅の魂、覚醒
【第三者視点】
雑草だらけの庭に雪が舞い始めた。ふわっとした雪だが、恐ろしく冷たい。
新八は驚いて空を睨んだ。
「なんで、雪なんか……初夏だってのに!」
「あの日も季節外れの大雪であったな、永倉新八」
すみれは頬に冷ややかな笑みを刻んだ。何を指すのか、新八はすぐ理解した。
「桜田門外の変か?三月にあんなに降るなんざ、考えられねえ。お前の仕業だったのかっ」
「気付くのが遅いのう」
「ちくしょう〜っ!」
新八が刀を振り上げ、すみれは後ろに飛びのいた。
「なんでだ?なんで、大老を殺さなきゃならなかった!?」
「私を亡き者にしようと企んだからじゃ。井伊直弼を襲ったものたちは、私のことも狙っていたろう。父の雇った刺客じゃ」
「大老はお前を守れと俺たちに頼んだんだぞ。刺客を送り込むはずがねえ!」
「あの男はぬるいのじゃ。私を生かしてはおけないと頭の中では理解しながら、助けたい気持ちが勝ったのだからのう。鬼の大老が聞いてあきれるわ」
「てめえ〜っ!」
新八は無茶苦茶に刀を振り回した。スイスイっと避け続けるすみれ。
「どうした?永倉新八。そちの腕はこの程度か?」
「うるせえ!神道無念流免許皆伝・二番組組長の腕はこんなもんじゃねえ!!」
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