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狼に囚われた姫君の閨房録
第47章 局長命令!すみれを殺せ!!(その三)
【歳三視点】
(……兄上さま)
すみれの声が頭の中に響いた。
(すみれか?)
俺は周りを見回した。鏡張りの四方八方、すみれが幾人も映っている。
(私を斬ってください!これ以上、ご迷惑をおかけしたくない!!)
(承知だ!すぐに楽にしてやるからな!!)
言いながら、俺は闇雲に刀を振るった。
鏡が破れ、何人ものすみれの幻が砕けた。天井や壁に破片が突き刺さる。
「待て、歳!」
親父が焦る俺を押し留めた。
「慌てるな。すみれをよく見定めろ。必ず本体があるはずだ」
「わかってるさ、そんなこと!どうしたら分かるんだよ?」
親父は答えずに、鏡に映る無数のすみれを凝視する。
その間も矢は俺や親父を否応なしに狙ったが、親父は無駄のない動きで躱した。
「見つけた!」
と、声を弾ませる親父。そして、鏡と鏡の境目を指さした。
「お前なら分かるだろう」
合わせ目に僅かに入った亀裂。薄紅色のあの裂け目は……
「間違いねえ!」
俺は叫んだ。
あれはすみれの女の部分だ。俺が何度も愛し、味わった場所。
亀裂から滲み出た雫に、俺は生唾を飲んだ。
「今、楽にしてやる。味わいながらな」
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