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狼に囚われた姫君の閨房録
第13章 芹沢鴨暗殺
阿鼻叫喚の世界だった。血の匂いと闘気が充満していた。
「うっ……」
吐き気がして、私は口を押さえた。
刀を交える剣戟の音。それに、肉を切り骨を断つ音が混じる。血煙で、視界が効かない。
何が、どうなっているのか?
兄上さまたちはご無事?
血の霧の中に、爛々と血走った目があった。
(兄上さま?……違う!)
私は胸元の懐剣を抜いた。この凶々しい殺気……これは!
「芹沢かっ」
「小娘か?」
芹沢の野太い声が応じた。
「てめえ、何しにきやがった?」
叫んだのは、満身創痍の歳三だった。
「戻ってくるなと言ったはずだ!」
「逃げろ! こいつは、お前の手に負える相手じゃねえ!!」
怒鳴っているのは、左之助か?
血の霧が晴れてきた。
あちこちに手傷を負った兄たちがいた。芹沢はかすり傷だというのに……
「おのれ!」
私は懐剣を身構えた。
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