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狼に囚われた姫君の閨房録
第15章 池田屋事件(前編)
蝉時雨の下を生ぬるい風が通り抜ける。草いきれの強い匂いがした。
川沿いの大通りは人出でごった返ししている。
「いつもより、賑やかですね」
私が呟くと、
「もうすぐ祇園祭だからな。町中が浮き立ってるんだろう」
左之助は答えた。
「山鉾巡行はすげえらしいぜ。見たこと、あるか?」
「彦根のお城にいましたときに。父が大老になる前でしたけど……」
彦根城は現在の滋賀県にある。京には近いのだ。
「兄上さまたちは祇園祭は?」
「今年は見物してる暇はねえだろうな。たぶん、大捕り物がある」
大捕物?なんの?
尋ねようとした時、左之助は『枡屋』と布看板に書かれた店の前で立ち止まった。
「邪魔するぜ。主はいるか?」
左之助が暖簾をくぐると、帳場にいた番頭らしき男が頭を下げた。
「これはお武家さま。おいでなさいませ。何をお求めで?」
三十代の男性だった。落ち着いた感じで、頭の回転も良さそうだ。目に独特の光があった。
「こいつに着物一式を仕立ててくれ。多少、値が張っても構わねえ」
「夕刻までには仕上がりますが、その間、二階でお待ちにならはりますか?」
「空いてるか?」
「へえ、もちろんでございます」
「道具は?」
「いろいろ、揃えてございます」
番頭は顔中を作り笑いでいっぱいにした。
「娘さんも楽しめまっせ」
何を楽しむのか?なんのことかわからない。
混乱している私をよそに、左之助は箱階段を上がって行った。私は慌てて後を追った。
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