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ワルキューレの朝ごはん
第5章 闇
その心が折れて撤退してゆく
先が他ならないこの非在郷
(ユートピア)の美しい均衡と云う夢の中で、本当に幼い子供の如く戯れる無葛藤地帯。

大阪メトロ谷町線の大日駅
の駅前に嘗(かつ)て存在した
三洋電機の冷蔵庫の工場は今やAEON(イオン)と云う
名前のそれに変わった。

通っていた中学も自宅も今
はない、、それを「退廃」と
云うのなら「退廃」なのだ。

10年後の俺様は故郷を郷愁すら宿っていない瞳で眺めて見るのがせいぜいなのだが、

メトロからJRに乗り換えてまでこんな場所に赴いた理由を並べるほど運命の悪戯と云う陳腐な言葉に縋りたくなる。

この街は考えるまでもなく、彼女と僕の懐かしい記憶で埋め尽くされてた、小さな映画館やら路地裏のレストラン、

そのどれもが、彼女と一緒に過ごした日々の風景だった。

365日恨みがましくそんな感傷に浸ったところで過ぎ去る日々を取り返せるわけでも

今以上の何かを望むつもりも別に今が悪いわけでもない。

アドレスのメモリーだって消そうとはしなければ、多少は増えていつかこうして思い出す日があればその時まとめて整理でもすればいいだけ・・

バズルのピース(断片)を拾い集めるように過去の記憶を辿りながら彷徨うと云うのは・・

「愛の物語」の忠実な継承者としての特性だな、見えないバズルの失われたピース・・・・

そのパラダイスの地盤は儚く脆弱で今にも崩れ落ちそうな廃墟だったのだ・・10年後の主人公はところで愛はどうしてしまったのだろうと空しく辺りを漂う他ないだろう・・・・

そして背中まであった頭毛が緩やかな癖毛のかかったボブに変わっていなくても彼女と気付くには時間がかかった。

以前よりメイクが上手く嫌味のない服装のせいでもない、

その眼光は彼女であることは間違いないはずなのに、数年の隔たりは彼女を「大人」の女性に進化させていた。

「ありがとう」と云う言葉を口にする迄の間にステンレスの灰皿に添えたままの煙草の火は根元近くまで燃えて白い煙をくゆらせ燻っていた・・・・

ワルキューレの朝ごはん

( ; =Д=)ノ○>(=。)っ)完結。
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