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スカーレット オーク
第11章 11 デート
 美術館に入るとまず小さな出土品に出迎えられた。
金貨や銀貨が鈍い光を放っている。

「この頃って日本何してたんですかね」 
――紀元前五百年も前。

「縄文時代が長いからね。」

 大友は黒いヘラクレスが描かれた赤茶色の壷を見ている。

「ヘラクレス好きなんですか?」
「子供のころに昆虫展で見たヘラクレスオオカブトがすごくかっこいいと思ったんだ。しかも『ヘラクレスの栄光』ってゲームも流行っていて強さの代名詞のようだったんだよね。それでヘラクレスをなんとなく調べるとギリシャ神話に行きついて。ちょっと憧れたけど自分とは全然違うなあと思って親しみは持てなかったかな」
「大友さんはヘラクレスよりオデュッセウスが似合ってるかな」
「うーん。本当にどちらかと言えばだね」 

 照れ臭そうに大友は言った。

 緋紗は唐突に、「オデュッセウスのベッドの話知ってますか?」と、聞いた。

「うん。確か生えているオリーブの大木をそのまま使って作った動かせないベッドの話だよね」
「生きてる木のベッドなんていい香りがするんでしょうね」
「丈夫で長持ちしそうだよね」

 現実的な大友に緋紗は笑った。
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