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許嫁が多すぎる
第11章 四日目
二人はライブハウスから車で屋敷へ戻る。
まだこの時間であれば充分に九時には間に合ってしまう。

遅刻を期待していた翔太は力を落とす。

「一条寺さんってさ……何でそんなに許嫁にこだわるの? 正直アイドルで人気絶頂期なんだから結婚なんて考えないでアイドル続けたらいいのに」

「続けますよ、アイドルは」

「結婚したら人気なんて急降下だぜ? やめとけよ」

「余計なお世話ですけど?」

翔太の言葉に一条寺はむっとして言い返す。
しかし翔太は気にした様子もなく言葉を続ける。

「お前のファンがたくさんいるんだぜ? そいつらをがっかりさせていいのかよ? それにさ、ほっといても」

言いかけて翔太は口籠る。

「なんですか? ほっといても、なんですか? 言いかけたなら言ってください」

「ああ。言い方悪いけどさ、ほっといても人気なんてすぐ落ちるだろ、アイドルなんて。それまで必死にアイドルしておけよ」

翔太の言葉に一条寺は言葉が詰まる。

「いや、ごめん。でもそうだろ? アイドルなんてガキの頃から何人も見てきたけど、大抵飽きられて、テレビにもほとんど出なくなってさ。そこから女優だとかタレントとして這い上がってくる奴なんて本当にごくひと握りだよな」

謝りながら言ってはいるが、翔太は歯に衣着せぬ物言いをした。
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