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朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第3章 #2


もうすっかり陽もくれて、辺りは暗くなっていた。


「あ!事務所に連絡すんの忘れてた」


慌てて携帯を取り出し電話をする片桐を、今度は上田が観察した。今まで周りにはあんまり男はいない環境だったし、まして少し歳上の社会人だ。

子どもを相手にサッカーをしていた時とは結構印象が違う。……言葉遣いのせいだろうか。


「もしもし片桐でーす、お疲れさまです。定時連絡遅れました。……いや、なんもないすよ?……はい、……え?……あー。悪いんすけど今日は直帰で……いや、朝シロクマかふぇ予約するの忘れたんで急いで帰りました」


電話越しに相手の笑い声だけが聞こえる。片桐はその後適当な相槌を打って電話を終えた。


「……何、白熊って」

「アニメ」

「……嘘?」


上田が眉をひそめると片桐は首を傾げた。


「車で女子高生口説いてる中とか言えば良かったん?」

「テキトーなオトナだな」


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