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朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第4章 03


 片桐にされたような、溺れるキスを。美希に味わさせることが出来ればいいが。いまいち無味乾燥めいていてほど遠いものだった。経験値の差か、技量か、何が原因かは上田にはさっぱりわからない。

 試しに訊ねてはみたが、後輩の中学生が上田以下でも不思議はない。収穫はなかった。


(もっと別の……経験豊富なヤツとか。知り合いにいないしな)


 さすがに両親は候補からはずした。参考になるか以前に聞きたくもない。クラスメートの中には男遊びが激しいのもいるが――


 上履きを履きながら、チラと視線を向ける。朝から廊下で下品な笑い声をたてる数人。クラスが同じというだけで、上田とは別の種族すぎて話しかけたこともない。


「ショボいおじさんだったからさぁ、このひと痴漢です!って言ってやったの。必死に言い訳とかマジでウケるし」

「駅員とか舞子の話全面的に信じてたよね!」

「女優になろうかなぁ!」


 ゲラゲラと煩い。上田は無言で足早に通り過ぎた。やはり関わり合いにはなりたくなかった。


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