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朏の断片‐ミカヅキ ノ ダンペン‐
第4章 03
真希が学校に行っている時間、美希には退屈な病室で話し相手もいない。カチカチとシャープペンシルを鳴らし、何の気なしに手紙を書いた。
『どこかの誰かさんへ
私は真希の双子の美希です。真希よりは可愛くないかもしれないけれど、私も生きているうちに一度恋をしたいです。もしも会えたら、抱き締めてキスしてくれますか』
そこまで書いて、コロンとペンを転がした。宛名が変なのもさることながら、内容も大分おかしい。動機も順番も何もかもおかしい気がした。
ときめくキスをしたいから恋がしたいのか。年頃の娘なら当たり前の普通のことを、してみたいと思うのはただの無い物ねだりだ。年頃だからといって、皆が皆、恋してキスしているわけではない。
真希がしてくれた。それはほんのおままごとかもしれない。本物のキスとは別物かもしれない。だとしても。
『真希からお裾分けをもらいました。ごちそうさまでした』
再びペンを手に続けた手紙はますますおかしくなった。可笑しくなった。美希は一人でクスクスと笑う。