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Gemini
第6章 知らなかったこと
泣いてたわけじゃない。
なぜだか勝手に涙が浮かんできちゃうだけなの。

今もこの前のキスも、嫌だった訳じゃない。


そう伝えたいのに、言い訳みたいに聞こえてしまいそうで、結局口には出せないまま。ただルカの胸に耳を当てて鼓動を聴くことしかできなかった。


ルカは黙ったまま何度も私の髪にキスをした。
「ねぇ…ルカ…」
ルカを傷つけたんじゃないかと心配になって、顔を見上げてみる。

すると、ルカのキスはこめかみから頬を伝って、自然と私の唇に辿り着いた。私は初めから口を開けてルカの舌を受け入れ、ごく自然に両手をルカの首に回していた。

(優しく私の舌を撫でてくれるこの柔らかな存在を、私はなぜ拒んだんだろう。)

(さっきだってあんなに…)
思い出してグッと内ももに力が入る。

「ルカ…」
私が話し始めても、ルカは唇を離してはくれなかった。
「私…嫌だった訳じゃないの…」

私の言葉を聞いて一瞬ルカの舌の動きが止まった。でもすぐにまた動き始める。ルカの腕が腰に回されて抱き寄せられると、ルカの下半身の塊の存在が伝わってきた。

「なぁmon bébé」
「…」
「もしかして続き…して欲しい?」
いつもよりもっと意地悪な笑顔でルカは言った。

私はルカの目をじっと見たまま、ゆっくりと一回だけ瞼を閉じてまた開いた。

ルカは驚いた顔で目を見開いた。
軽く握った右手で口を覆ったのが、まさか嬉しさにニヤける口元を隠すためとは思わなかったけど。

「本気かよ」
「だって…」

「まさかオレのこと…」
「気持ち…よかったの」

「あ、そう………じゃあ、場所変えよう」
「どこに?」

「カナデのベッド」

ベッドという響きに一瞬戸惑ったけど、すぐにルカのキスがその戸惑いを溶かしてくれた。
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