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第9章 一瞬を必死に生きろ・・・

『ぇ・・・』


声に出していたのか記憶はない



ゾワっと…全身の毛が逆立つような
そんな感覚にみまわれて


オレはコートの真ん中にいる
弟の姿に釘付けになった



オレにとっては

生意気で憎たらしい弟



運動神経が良いのは知っている

子どもの頃

一緒にスポーツクラブなんか連れてって

どこに行っても、何やっても

目を引く才能があって



なんか知らないけど

なんでも出来ちまって


誰に似たのか知らないけど

器用にこなせる弟


かわいげのない・・・オレの弟





なんか知らないけど

何かと出来てしまうヤツってことも

知っている



部活漬けの日々を送って

それなりに優秀らしい、それも

知っていた・・・




けど




オレは、現実に

弟のその姿を見たことは

一度もなくて



その事にも改めて気付きつつ

コートを眺めた



それくらい

衝撃だったんだ。




コートに立つ弟は・・・




初めて見た、その姿は





確実に、オレが知らない弟



別人みたいな

弟の姿だった。





この時、チームの中で

ずば抜けて背がデカいワケでもない

(バレー部デカいヤツ多いからね)




リョウキが目立つのは

図体じゃなかった





『ぁ・・・』


ホイッスルが鳴る



また、得点が入る




目立つのは、そいつの




リョウキの身体能力だった。





∥あれ？中学生の試合だよね？∥

なんて、呟きそうに




興味なくても

ボケ～っと観てても

つい目が留まる



オレは、そんな一人になっていた