この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それでも僕は
第12章 12※
「宗田くんがこんなに可愛くなったのに、笑うなんて小谷くんヒドい」
「いやいや、こんなに可愛くなったからおかしいんだって…遥ちゃん相変わらず仏頂面だ」
相変わらずの仏頂面の僕に正臣くんはわざとらしく肩を竦めた。
「もっと恥ずかしがるような可愛いげが遥ちゃんにもあればな…」
「……可愛いげがなかくて悪かったですね」
僕と正臣くんのやり取りに大山さんはくすくすと笑う。
「じゃあ、正臣くんも女装してらどうですか?」
「はぁ…?」
僕が思い付き発した言葉に正臣くんはぽかんと口を開けて固まった。
「いやいやいやいや…無理でしょ?そもそも俺の分の服なんてないだろうし」
「大丈夫だよ、ちゃんと予備もあるから小谷くんの飛び入り参加OKだよ」
大山さんは悪気なく正臣くんの逃げ場を潰す。彼女は曇りひとつない純真無垢な笑みを浮かべながら正臣くんに顔を近付ける。正臣くんは彼女の笑みに恐怖を感じているが、あいにく逃げ場ない。
「小谷くんも女装しようか?」
「……はい…」
大山さんに気圧され、正臣くんも女装されられる。僕は正臣くんを圧倒している大山さんを見て彼女は大物かもしれないと思った。
「どう?宗田くん?」
「うん、可愛いと思うよ」
大山さんの手で女装させられた正臣くんが顔を真っ赤にして黄色の女物の浴衣を着ている。
「ううう…覚えてろよ、遥ちゃん」
「え?僕?」
なぜか僕を恨めしそうに見ている正臣くん。そこまで女装が嫌だっただろうか?
「ほら、小谷くんと宗田くんの番だよ」
大山さんの計らいで正臣くんも女装コンテストに出ることになった。僕と恥ずかしそうにしている正臣くんが壇上に上がると黄色い悲鳴があっちこっちで上がった。
「優勝おめでとう、小谷くん、宗田くん」
満面の笑顔で僕と正臣くんのミスコン優勝を祝う大山さん。
「ううう…嬉しくないよ」
僕はため息を吐いて、落ち込んでいる正臣くんを慰める。大山さんは他の仕事があるからと言って去って行った。
「じゃあ更衣室で着替えますか?」
「うん…」
僕と正臣くんはミスコン会場となっている体育館の更衣室に向かう。