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それでも僕は
第7章 7★
「元々両親が共働きだったので家事にはなれています」
俺の説明に優斗さんはひとまず納得した。
「じゃあ行って来る…定時には上がれると思うから…それと時間がある時は彩木くんのお見舞いに行ったらどうだ」
俺は優斗さんを送り出す、優斗さんは家を出る前にそんなことを言う、俺は優斗さんの言葉に戸惑う。俺は食器を洗い午後からどうするか考える。洗濯や掃除のあるがそこまで時間は取らないだろう。
「南さん!!来てくれたんだ!!」
彩木くんの入院している病院に向かうと彩木くんが予想以上に食い付いて来た。何が嬉しいか分からないが彩木の喜びっぷりに俺はたじろぐ。
「あ、あぁ…あっこれ来る途中に買ったケーキ…食べる?」
「うん!!!」
病院に来る途中で買ったケーキをサイドテーブルに置く。俺はケーキを切り分け彩木くんに渡す。
「…飲み物買ってくるけど、何が良い?」
「うーん、ミルクティーが良い」
俺は彩木くんの病室を出て自動販売機を探す。
「ちょっと良いかしら?南くん?」
「はい?」
前に彩木くんを探していた看護士が俺に声をかけてきた。看護士は少し迷ったように俺から顔を逸らす。
「彩木くんのことだけど…彼、実は」
「お帰り…」
「先に食べてれば良かったのに」
律儀に俺を待っていた彩木くんに俺は少し呆れた。俺は彩木くんにミルクティーを渡しイスに腰掛ける。一見何の曇りもなく明るい彩木くん。その笑顔に影は一切見当たらない。会ったばっかりで人の心の奥底まで読むことなんて不可能かもしれないけど。
『実はね?彩木くんは重い心臓病を抱えているの』
『……え?』
看護師の言葉に俺は強いショックを受ける。彩木くんの親しいと言えるほど一緒の時間を過ごしてないし、またお見舞いに行くとも決めていない。今後会うかどうかは未定なのに、もう会えないかもしれないと思った瞬間、胸を抉られたようなショックを受けた。
『…大丈夫、ちゃんと手術をすれば良くなるから』
看護師は胸を抑え顔色を悪くした俺を慰めるように言う。自分でもなんでこんなにショックを受けているのか全く理解できなかった。理解ができないまま話は進んでいく。