この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それでも僕は
第7章 7★
『…でも最近、仲の良かった子が亡くなって落ち込んでいるみたいだから南くんもそれとなく気遣かってほしい』
俺にそう言って看護師は仕事に戻って行った。取り残された俺はしばらくただ呆然と立ち尽くす。
「南さん?」
「…あ?」
「どうしたんですか?ぼーっとして」
彩木くんが心配そうに俺を見ている。俺は慌てて意識を引き起こす。
「いや、少し考え事をしていただけだ」
彩木くんはしゅんと肩を落とした。
「……ごめんなさい、南さんもご両親が亡くなって大変だと言うのにはしゃいでしまって」
俺はここで看護師が言ったことの意味を理解した。彩木くんは俺に心配させないように明るく振る舞っていただけで実際は無理しているのに他者を気遣かっている。
「…ふぎゃ!?」
「……夕食の買い出しのついでだから余計な心配をするな」
普通に『心配するな』と言えば良いのに素直にそれを言えなかった。なぜか彩木くんを心配することがとても勇気が必要なことに思えた。
「行ってきます」
「あぁ…いってらっしゃい」
週明け…俺は部活に復帰した。優斗さんにもう少し休んだほうが良いのでは?いと言われたが彩木くんのことが気になって仕方ない。炊事洗濯していてもずっと彩木くんのことばかり気になっていた。
しょっちゅう彩木くんのところに行くわけにもいかないので気が休まらない。これなら部活に出ていたほうがよっぽど気が楽だ。俺は優斗さんのマンションを出て通っている小学校に向かう。俺の通っている小学校はバスケが強い学校で何度か全国に行っている。
「南か…もう大丈夫なのか」
チームメイトの臼井が心配そうに俺に声をかける。もう大きな大会も終わったため、俺達6年生は卒業するだけだ。だから練習に来ない奴もいるが両親のこととか、彩木くんのことでいっぱいいっぱいの俺は何も考えたくなくなって身体を動かしたい衝動に駆られる。俺は朝練で汗を流し、授業を受ける。まだ両親が亡くなってそれほど時間が経ってないこともあって俺に向けられる視線はどこかよそよそしい。放課後はどうするか迷ったが結局部活に出て汗を流した。あまり落ち着きがあるほうではない俺はこうして身体を動かしているのが1番ほっとする。