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それでも僕は
第10章 10☆
「あっつ…」
6月も後半に入り、暑い日が続く。中学に入り、忙しくなったせいでゆうと週末にしか会えないが、それでも今の俺には充分だった。
「ケイくん、放課後空いている?」
クラスメイトの浅見ちゃんは休みがちの俺を気遣い、いつも声をかけてくれる。
「……ごめん、今日は病院なんだ」
「ううん、気にしないで」
遊ぶのを断れた浅見ちゃんはいつも一緒にいるクラスメイトのほうに向かった。
「案外慧って罪作りだよな」
俺の後ろで黙々と帰り支度をしていた亨くんがいきなり意味の分からないことを呟く。
「慧くんって人たらしだからね」
あやめちゃんが苦笑いしながら亨くんの言葉に同意を示す。
「人を引き付ける才能はあるもんな、慧は」
「そうだよね、慧くんを見ているとついつい世話を焼いちゃいそうになるよね」
「ちょっ…やめてよ、ふたりとも」
俺の頬をふたりがつんつんと突っついてくる。ふたりにからかわれむくれる俺を見てふたりは吹き出した。
「じゃあ帰るぞ、慧」
俺達3人は教室を出る。俺達はいつものように他愛のない会話をしながら通い慣れた道を歩く。
「じゃあ、俺は病院があるから」
いつもは家の近くまで一緒に帰るが、今日は病院あるからふたりとは家の途中の信号機付近で別れることになる。
「大丈夫…?病院まで送って行こうか?」
あやめちゃんは眉を寄せる。
「そこまで心配しなくても大丈夫だから」
「はあ…そのかわり、少しでもおかしいって感じたら連絡しろよ」
あやめちゃんの心配させないように笑顔を作る俺に、亨くんは呆れるようにため息を吐いた。俺はふたりと別れ、いつも通院している病院に向かって歩き出す。
「はい…もう服を着て大丈夫だよ、慧くん」
柔らかな笑みを浮かべるのは俺の主治医の来生先生、俺が小さい時からずっと俺の担当してくれている人で、父親の顔すら覚えていない俺にとっては父親代わりでもある。
「……調子どう?また辛いの我慢してない?」
「はい、最近は体調が良いんです」
「………慧くんの大丈夫はあまり信用できないよ、いつも大丈夫って言いながら無理するんだから」
大丈夫と豪語する俺に来生先生が目を細める。