この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第8章 楽しかった?
私の南斗好きがバレバレだから顔が火照って熱くなる。
「ほらほら、また熱が上がる前に南斗の家に送ってやるよ。」
冷やかす北斗さんを睨んじゃう。
私が睨んだくらいじゃ北斗さんは平気だ。
涼しい顔で車を運転しながら
「早月先生と2人で俺をからかった仕返し…。」
とか言って来る。
「カニ、楽しみにしてる。」
私を南斗の部屋に送った北斗さんが帰ると何故か涙が溢れ出す。
やっと帰って来た安堵の涙…。
今の私が帰りたい場所はここだと改めて実感する。
その事を南斗に伝えたい。
旅行の荷物を片付けて南斗の為に食事の用意をする。
暗くなっても南斗は帰って来ない。
そろそろ飛行機は空港に着いた頃…。
退屈を紛らわす為にお風呂も済ませる。
早く南斗に会いたい。
南斗が脱ぎ捨ててたシャツを抱いて南斗の帰りを待つ。
南斗の匂いが消えかかったシャツは冷たいから私は独りぼっちなんだとリアルに感じちゃう。
ねえ、南斗…。
早く帰って来て…。
シャツに包まり南斗の部屋の片隅に踞る。
「そんなところで寝たら風邪ひくし、また熱が出るぞ。」
南斗の声がする。
もう夜の11時…。
「おかえり…。」
「疲れてんだ。話は明日な。」
「でも…、ご飯…。」
「先に食っとけって言ってあったろ?」
面倒臭そうに南斗が言い、旅行の荷物を無造作に洗濯機にぶちまけたらお風呂に行く。
南斗の冷たさに息が詰まる。
南斗…、南斗…。
北斗さんは南斗は私を見捨てないって言ってた。
でも南斗は私から離れようとしてる。
私が面倒な子だから…。
籠娘は諦めてあの街で暮らすべきだから…。
逆らっても虐殺されるだけ…。
私は怯えるだけのちっぽけな存在…。
目の前が真っ暗になる。