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籠の中の天使
第8章 楽しかった?
「人はね。誰しも自分以外の人間を怖いと思ってるんだ。」
私が他人に対して恐怖を抱くのは普通の事だと北斗さんは言う。
私の様な経験をすれば、その恐怖が自分の中で更に増幅されて普通では居られなくなる。
ましてや思春期の女の子としては最低な家庭環境にある。
だから私が人と上手く関わりが持てなくとも自分を責める事だけはするなと北斗さんが私を優しく叱る。
「でも…。」
「焦らなくていい。本当はね、患者に頑張れって言葉は言っちゃいけないって言われてる。それでも俺は咲都子ちゃんに頑張って欲しいと思ってる。逃げて自分の未来を諦めて欲しくないから…。」
「うん…。」
「まだ高校生なんだよ。俺も緋彩も高校生の頃なんか他人に気を使うなんて事すら考えてなかったよ。」
「早月先生は立派なお兄ちゃんだったって言ってた。」
「あれは褒め過ぎ…。咲都子ちゃんの前だから俺が恥をかかないようにと早月先生が気を使ってくれただけだ。あれが大人の気遣いってやつね。」
「早月先生は確かに大人だ。」
「咲都子ちゃんも、咲都子ちゃんの周りの人も、まだ高校生。人に気を遣う余裕なんか無くて当たり前だと思ってやれ。そうすれば少しは怖くなくなるからね。」
主治医として北斗さんは私の悪いところを治そうとする。
私が悪いのだからと自分を責めたりすれば、心と身体のバランスが取れなくなって身体が勝手に熱を出したりするらしい。
「咲都子ちゃんは何も悪くない。寧ろ悪いのは保健医のくせに咲都子ちゃんに無理をさせた南斗の方だ。」
フンッと北斗さんが鼻を鳴らして南斗を悪く言う。
「南斗は悪くないよ。他に怪我をした学生が居て…。南斗も凄く忙しかったから…。」
必死に南斗を庇う私を北斗さんがクスクスと笑う。