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籠の中の天使
第8章 楽しかった?
「また北斗に馬鹿にされそうだ。」
自分用のカニしか買わなかった南斗は北斗さん達のお土産をクッキーやチョコレートで誤魔化したらしい。
「咲都子の分のチョコレートもあるぞ。バスの運転手から貰った時、美味そうな顔して食ってたから…。」
変わらない優しさが嬉しかった。
小さい頃から私がおやつなどで美味しいと言えば同じ物を何度でも買ってくれる南斗だった。
私の大好きな南斗に思わず抱きつけば照れた表情をする南斗が頭をポリポリと指先で掻く。
「咲都子…。」
久しぶりに頬に触れる南斗の唇…。
目を閉じて南斗の身体に身を委ねる。
頬を掠めた唇が私の唇に触れる。
ギュッと南斗のシャツを握る。
「顔を洗って着替えろ。朝飯食ったら買い物に行こう。」
そっと南斗が私を突き放す。
南斗は何かを我慢してる。
私が学生だから、南斗は保健医として耐えてる。
もしも南斗に私の気持ちを押し付ければ、南斗がますます苦しむかもしれないと思うと、この気持ちはもう少しだけ私の中だけに押し留めるべきだと考える。
「買い物?」
いつものように南斗と過ごせるだけで幸せなのだからと南斗に笑顔を向けて聞く。
「山盛りのカニがあるんだから、カニ料理をしよう。」
そう言って南斗も笑顔を見せてくれる。
酢の物、天ぷら、カニ炒飯。
ネットサイトで作り方を調べて南斗と材料をメモする。
昼前には無事に宅急便が届き、午後からは北斗さんや病院に2人でお土産を持って行く。
「咲都子ちゃんのお土産はカニなのに、実の弟はクッキーか?」
北斗さんが南斗を馬鹿にする。
「俺は兄貴からお小遣いを貰ってません。」
南斗も負けじと言い返す。