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籠の中の天使
第11章 散る花



千紗先生は嫌い…。

あの人は私から南斗を奪おうとする。


「モッチー…、千紗先生と結婚とかしちゃうの?」


杉山さんが泣き出した。

慌てる向井さんが立ち上がり杉山さんの隣に座って杉山さんの肩を抱く。


「だから諦めろと言ったでしょ?保健医だって言っても学校の先生なんだよ。学生の瑠奈が相手にされる訳がないじゃん。」


杉山さんを説得する向井さんの言葉は私の胸も串刺しにする。


「でも好きなんだもん。本気で好きになったんだもん。初めての恋だったのに…。」


泣きながら叫ぶ悲痛な恋心は無情な波の音に掻き消される。

誰もがそんな恋は無駄だと悟ってるから沈黙する。

私の恋も無駄なのだと言われてる気がする。

杉山さんが落ち着いた頃、夜空に大輪の花が開く。

ドンという音と同時に次々と花が咲き誇る。

そして、その花は一瞬で散る。

咲いても咲いても散る花が美しいと感じるのと同じくらいに虚しいと感じて来る。

幻の花は消えるだけの運命…。

一瞬だけ咲き誇る花のように学生の恋は無力だと思う。

ぼんやりと花火を眺める私の手を峯岸君が握る。


「明日、暇?」


耳元でそんな囁き声がする。

無言のまま頷く。


「後で連絡する。」


夜空いっぱいに咲き誇った花の光が峯岸君の顔を照らす。

ゾッとするような笑顔が見えた。

彼は私を手に入れたと勘違いをしてる。

誤解だと言わなければ…。

私が好きなのは峯岸君じゃないと伝えなければ…。

私はまた、あの日の地獄を味わう事になる。

そっと峯岸君が握る手を離す。

なのに峯岸君は再び私の手を握って来る。

無理矢理な恋人繋ぎ…。

私が繋がりたいのは貴方じゃないと叫びたい。


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