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籠の中の天使
第11章 散る花



少し遅れた峯岸君が私に向かって走って来る。


「ごめん…、遅れた。もしも咲都子が居なかったらどうしようとか焦ったよ。」


私を見るなり、峯岸君が私の手を握って来る。


「あの…。」


反射的に手を引く。


「行こうか。」


峯岸君は私を見ずに手を引いて電車に乗り込む。

今日は日曜日…。

電車はそれなりに混んでる。


「昨日は参ったよな。杉山のやつ、本気で泣き出すし…。」


峯岸君が夕べの話を蒸し返す。


「それだけ…、持田先生の事が好きなんだよ。」


杉山さんの気持ちは少しだけ理解が出来る。


「けど、保健医じゃん。常識で考えたらわかる話だよ。」

「…。」

「モッチーだって学生相手に問題起こすほど馬鹿じゃないから千紗先生とよろしくやってんだろうし…。」

「でも、噂でしょ?」

「案外、噂じゃないと思う。あの2人って同じ大学の先輩と後輩って関係だったってバレー部の部員に千紗先生本人が言ってたくらいだし…。」

「大学の?」

「その頃から付き合ってたのなら、結婚も秒読みだろって皆んな言ってる。」


皆んなって誰だろう?

お父さんの持田先生はそんな話をしなかった。

お兄さんの北斗さんも知らない話…。

あの街の人が知らない話を峯岸君がする。

私には実感が湧かない話をされても困る。

南斗は私を愛してる。

私は南斗だけに愛されたい。

それを理解してくれない峯岸君にイライラしちゃう。


「着いたっ!」


嬉しそうに峯岸君が叫ぶ。


「水族館?」


峯岸君が私を連れて来たのは夕べの花火大会が行われた海岸の傍にある水族館だ。

最近、リニューアルされた水族館はとても綺麗で人気の高いレジャースポットになってる。


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