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籠の中の天使
第11章 散る花
私の体調にすら気付かない人…。
「ねえ、峯岸君…。」
大きな水槽の前ではしゃぐ峯岸君を呼び止める。
「何?もう疲れたの。少し休憩する?」
1人で水族館を楽しんで1人で会話をする峯岸君とは付き合えないと心の底から思う。
「私…、峯岸君とは付き合えない。」
突然の告白に峯岸君が目を丸くする。
「えっと…、だから友達からでもいいって言ってんじゃん。」
「ごめんなさい。峯岸君が思ってる感覚と私が思ってる感覚は全然違うと思う。」
「違わない。言ったじゃん。俺は咲都子が好きだって、咲都子の為ならなんでもしてやるって、俺が咲都子の感覚に合わせればいいんだろっ!」
峯岸君が私の手首を強く握って水槽の壁に押さえ付ける。
あの日の恐怖が私の全身に駆け巡る。
抵抗すら許されなかった暴力…。
自分の価値観を押し付けた獣達…。
その獣に峯岸君も変化する。
「痛い…、離して…。」
「何が問題なんだよ。感覚が違う?岡村達が言うように咲都子はずっと上から目線で俺達を見てたのか?」
ギリギリと掴まれた手首が締め付けられる。
「違っ…。」
「何が違うんだよ?どうせ咲都子も本当はモッチーの事が好きなんだろ?モッチーに構って欲しくて病気のフリをするとか杉山よりも最低だよ。」
峯岸君の言う通りだと思う。
私は籠娘で最低な子…。
あの、やらしい街で生まれた穢れた女…。
誰も本気で私を愛してはくれない。
偽りの愛に満足する籠娘…。
南斗に愛される資格なんてないのかもしれない。
「最低なのはわかってる。だから峯岸君とは付き合えないの…。」
精一杯の気持ちを伝える。
これが最低な私の最低な誠意…。
これ以上を私に求めるのはやめてと峯岸君に願う。