この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第12章 明けない夜
ノアは個人的な我儘だと言うけど私には胸がときめくような逃避行だと感じる。
「女の子からすれば、そんなに愛されてるって思うと羨ましいよ。」
「けど、その結果として日本にはとんでもない爆弾が落ちた。」
赤い炎が悲しみで揺れる。
慌てて目を伏せるノアの手を握る。
「どうなったの?」
「婆さまは日本が傷付く事に耐えられなかったんだ。」
日本に1人で帰って来たノアの祖母は間もなくして1人の男の子を産んだ。
「それが俺の親父…。」
赤い髪のお父さんは日本に居場所が見つけられず、アメリカと日本を行ったり来たりする。
「俺も親父と同じでずっと居場所がなかった。」
アメリカではアジア系のユダヤ人という扱い。
日本じゃアメリカ人という扱い。
居場所が無いノアがじっと私を見る。
「咲都子はこの街にちゃんと居場所があるのか?」
その質問に涙が出た。
私がノアに感じた親近感はお互いに居場所を持たない人間同士が淋しさを埋める為に寄り添おうとする憐れみだった。
私に居場所なんか無い。
「あの街は私を傷付けるの…。」
あの街に生まれたのに…。
あの街は私を傷付ける。
「誰も咲都子を助けてくれないのか?」
「南斗が頑張ってくれてる。北斗さんも…。」
「なら、なんで泣く?何を怖がってる?」
「南斗は私だけをあの街から出そうとしてる。私は南斗と出たいのに、南斗は大人で私が子供だから私の気持ちは南斗に伝わらないままなの…。」
「そんなの大人の勝手な都合だな。」
私の拙い恋はノアの祖母と同じで勝手な都合に歪められてるとノアが言う。