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籠の中の天使
第12章 明けない夜
学校をクビになれば私を守る事すら出来なくなる。
私が南斗の部屋で暮らしてるだけでもリスクがある。
だからといって南斗の行動に納得なんか出来ない。
裏切りに対する怒りが込み上げる。
「なら…、千紗先生とならいいって言うつもり?」
ずっと頭から離れないイメージ…。
千紗先生とならキスをする南斗…。
私はキスが許されない街の籠娘…。
憎しみに満ちた私の言葉に南斗が目を見開く。
「塚本…先生って…、なんの…話だ。」
嘘が下手な南斗を私はわかってる。
「学校中で噂になってる。体育館倉庫で2人が抱き合ってたとか車でキスしてたとか…。」
「そんな噂…。」
「噂じゃないんだよね…。」
諦めて呟いた私の言葉を否定しない南斗…。
私の最後の希望すら粉々に砕ける。
「今まで…、ありがとう…。もう南斗は頼らないようにする。1人でも頑張れるようになるから…。」
俯いたままの南斗から離れて自分の部屋に引き篭もる。
翌朝、荷物を纏めた私は南斗の部屋を出た。
出たところで行く宛なんか無い。
あの街に帰る。
私が嫌いなあの街に…。
まだ誰もが眠ってる街に帰って来た。
お父さんもお母さんも眠ってる。
2人の横をすり抜けて窓の無い物置部屋に閉じ篭もる。
馬鹿な夢を見たと笑う。
籠娘はここから出ては行けない子だった。
カビ臭い部屋で踞る。
朝の8時を過ぎた頃にお母さんが起きる音がする。
「咲都子…?帰ってるの?」
私の部屋の襖の向こうから聞こえる声に返事もしない。
携帯が鳴ってる。
南斗からのメッセージ…。
『何処に居る?』
南斗の声ももう私には届かない。