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籠の中の天使
第12章 明けない夜
なのに誰もノアには声を掛けない。
私が一緒に居るから?
ううん、違う。
余りに威風堂々としてノアが歩くからだ。
毅然として、さながら王の如く街を歩くノアに誰もが見蕩れて声を掛け損ねてる。
「ここが家、あれが私の家のお店…。」
裏路地にある木戸の前でノアに説明する。
「この街…、マジにこんな店があるんだな。大学じゃ噂くらいしか聞かねえから驚いた。」
「ノアもお客として通ってみる?いいお店を教えてあげる。」
「俺は女に不自由をした事がありません。」
笑いながら私に手を振るノアが立ち去る。
ノアなら本当に不自由した事が無いと思う。
古臭いユーロビート音楽が流れる街を寄せ付けない赤い炎が揺らぐ事なく突き進む。
その背中は誇らしくもあり、その強さは妬ましくもある。
だからこそ、初めての相手にノアを選んだ。
あの人なら私の中に残る南斗の影を消してくれる。
キュッと唇を噛み締めると鉄の味がする。
迷わないと決めた。
それが南斗の為だもの…。
今夜も女の切ない喘ぎ声を子守唄にして眠る。
私はこの街で生まれた子…。
この街から出られない。
2階から聞こえる喘ぎ声が千紗先生の声に聞こえる。
あの女は南斗に抱かれてる。
そして私はノアに抱かれる。
これで私と南斗は対等になる。
籠娘に夜明けは訪れない。
闇へ闇へと堕ちる自分に笑いながら眠っていた。
お母さんがお店を開けた頃にノアが迎えに来てくれる。
「えっと…。」
この街に似合わない高級外車が裏木戸の前に停まってる。
「さっさと乗れっ!」
運転席に居るノアが叫ぶ。
狭い道路だからノアの車だと後続車が来ても避けられない。