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籠の中の天使
第12章 明けない夜



左ハンドルで紺色のベンツ…。

革張りの椅子…。

こんな高級車に乗り慣れてない私だけが緊張する。

サングラスを掛け、Tシャツにビンテージジーンズというラフなスタイルのノアは慣れた手付きでベンツを運転してる。


「この車、借りて…来たの?」


馬鹿な質問をしたのか、ノアがブッと吹き出して笑う。


「レンタカーナンバーじゃねえだろ?俺の車…。」

「こんな凄い車…、この街じゃ誰も乗ってないもん。」

「俺の周りじゃ皆んな乗ってる。」


ノアの周りの人って、皆んなお金持ち?

大学生って言ってたよね?

私がノアをガン見するから、照れ臭そうにノアがサングラスの真ん中を指で押して掛け直す。


「ジロジロ見んな。」

「いいじゃん。」

「何が?」

「ノアってカッコいいもん。」

「それって褒め言葉か?」

「うん…。」

「褒められてんなら、嬉しいけどな。」


カーステレオからは流行りのJ-POPが会話を邪魔しない程度に流れてる。


「この歌…、ドラマで使われてた曲だよね?」

「好きか?」


私が好きな曲だとハンドルに付いたボリュームを調節して音を大きくしてくれる。

普通の音楽、普通の会話…。

まだ始まったばかりのデートなのに、嫌な事を忘れさせてくれるノアに期待しちゃう。


「何処に行くの?」

「咲都子は何処に行きたい?」


質問に質問を返されて悩んじゃう。

デートなんかした事が無い。

普通の友達とも遊びに行った事すら無い。


「水族館…とか?」


少ない知識に頼って答えればノアがゲラゲラと笑い出す。


「なんで水族館なんだよ。」

「だって、デートの定番じゃん。」

「誰だよ…、そんなガキみたいな事を言ったやつは…。」


ノアがサングラスを外して私を見る。

その赤い瞳に見つめられると心臓の鼓動が速くなる。


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