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籠の中の天使
第7章 知られたくない
後3日もある修学旅行に耐えられるか自信がない。
お風呂から出て部屋で就寝を迎えても気持ち悪さで眠れない。
南斗が様子を見に来る。
「アイス…食べるか?」
本当はいけないのに私の為にアイスを買って来てくれる。
「南斗…。」
「少しでも寝ろ。明日はまた移動があるし、俺もずっと付き添えない。」
私の震える手を南斗が握る。
南斗の為に頑張らなきゃ…。
そう言い聞かせて眠る。
捻挫をした子に付き添う事になった南斗だからそうそう私には付き添えない。
一人で頑張らなきゃ…。
南斗に涙を隠して寝たフリをするしかなかった。
翌朝は朝食後に空港に向かい函館へと移動する。
函館に着いたら、ホテルに移動して昼食になる。
そこからは札幌の時と同じように自由行動だから学生は皆んながお土産を買う為に街へと繰り出す。
「咲都子は行かないのか?」
函館でも私は病人部屋で南斗と2人だけになる。
「明日の朝に朝市に行くスケジュールになってるから、そこで買えばいいよ。」
お土産って言っても両親とお小遣いをくれた北斗さんの為に持田病院宛の分を買うだけだ。
「南斗も買うの?」
「自分用のカニだけ買って家に送る。」
夏前という今の季節だと王道のズワイガニやタラバガニは無いけど毛ガニが旬だと南斗が言う。
その日は朝食を朝市で食べる事になるから無理をしてでも参加するようにと千紗先生からも言われてる。
しかも、朝市の後は団体行動の見学ツアーがある。
明日は1日中、南斗と離れてクラスの中で行動しなければならないとか思うだけで気が滅入る。
あの人達に本当の私の姿がバレたら…。
私はあの街に戻って、一生出られなくなる。