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籠の中の天使
第7章 知られたくない
知られたくなかった。
私があの街の子だと…。
だから必死に隠しちゃう。
「達也…、相原を怖がらせんなっていつも言ってんだろ。」
茂君が達也君を私から引き剥がす。
「えー?何で?咲都ちゃん、俺の事がまだ怖い?ねえ怖い?」
茂君に掴まれたまま達也君がジタバタしてる。
「また達也が余計な事してるよ。」
他の学生は私の悲鳴の原因が達也君だとわかると興味を失くしたように買い物を続ける。
どうにか書き終えた伝票をお兄さんに預け、支払いを済ませた私はクタクタになってる。
伝票は持田 南斗様宛にしなきゃならないから誰かに見られると絶対に困る事になると神経が張り詰めてる。
「朝飯ーっ!」
買い物が終わり茂君が張り切り出す。
市場を出れば巨大なイートインスペースがあり、うちの学校の学生で埋め尽くされている。
その片隅の席に私や向井さん、峯岸君達が市場で買ったおかずを持って座る事になる。
「ねえ、咲都って何処に住んでるの?」
上地さんがじっと私を見る。
食べかけてたイクラご飯が喉に詰まる感覚がする。
「どこだっていいじゃん。」
向井さんが私を庇うように答える。
「だって達也に聞かれたってだけで、あんなに悲鳴を上げるとか気になるじゃん。」
「咲都は知らない人が怖いんだよ?知らない人に自分の家とか知られたら帰れなくなるってわかるでしょ?」
「私達って未だに知らない人扱いって事?」
「止めなよ、優希。咲都はクラスメイト。それでいいじゃん。咲都の主治医の先生も無理に友達になろうとするなって注意を出してたんだから…。」
「でもさぁ…。」
そんな子とは友達になれない。
上地さんの呑み込んだ言葉が私にだけ聞こえる。