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籠の中の天使
第8章 楽しかった?
それでもいいと思う。
南斗と2人だけの時間が欲しいと願う。
「明日、お土産が南斗の部屋に届くし…。」
「わかった。でも飯は先に食っとけよ。」
南斗の指先が離れた瞬間、早月先生が私の夕食を持って部屋に戻って来た。
南斗から私と一緒に帰れると聞いた早月先生はガックリと肩を落として
「本当に歳は摂りたくないわね。やっと帰れるって思うだけで気が抜けちゃったわ。」
と苦笑いをする。
「お疲れ様でした。」
南斗が労いの言葉で早月先生を励ます。
「持田先生は最後まで気を抜かずに頑張って下さいね。」
早月先生がベテランの表情に代わる。
先生って本当に大変な仕事なんだと感心した。
熱冷ましの薬を飲んで寝る。
うつらうつらとする私の額に誰かの唇が触れる。
南斗だ…。
私が苦しんで眠れない夜は必ずそうやって付き添ってくれた。
今も南斗は私に寄り添ってくれている。
それを実感しただけで元気になれる単純な私だった。
翌朝は思っていたよりも早月先生が元気だ。
修学旅行の団体とは別行動で空港に着いた私と早月先生…。
「相原さん、お土産は大丈夫?買いたい物があれば空港が最後のチャンスだからね。」
そう言って早月先生が空港のお店でお土産を買い漁る。
私はもうお小遣いが無いからと早月先生の買い物をぼんやりと眺めるだけだ。
「早月先生…、飛行機の時間…。」
私が呼ばなければ早月先生の買い物が終わらない。
手荷物なのに大荷物を抱える早月先生と無事に飛行機に乗れた事に安堵のため息を吐く。
「なんだかんだあったけど、楽しかったわね。」
早月先生が満面の笑みを浮かべてる。