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籠の中の天使
第8章 楽しかった?
平気で人を傷付ける言葉を吐くクラスメイト…。
そのクラスメイトが悪いのだからと情け容赦なく反撃したクラスメイト…。
私が住所を隠しただけで、そんなのは友達じゃないと怒りを顕にしたクラスメイト…。
人は突然豹変する。
優しかった人が鬼のように変わる瞬間が怖くて堪らない。
私を傷付けたあの男の子達だって、ほんの少し前までは普通のクラスメイトで普通の男の子達だった。
彼らは突如として野獣に変化した。
その変化に恐怖を感じる私は人との交流を意図的に遮断しようとしてしまう。
「大丈夫、咲都子ちゃんはよくやってる。そうやって恐怖から逃げる為に引き籠もりになる人は多い。咲都子ちゃんは頑張って自分の中の恐怖と向き合えてる。」
優しい北斗さんが私の涙を拭ってくれる。
でも本当に怖いのは…。
「こんな私のままだと、南斗や…北斗さんが私なんか面倒だって…思うかもしない。」
修学旅行中、南斗は凄く忙しかった。
私は南斗が傍に居てくれないからと拗ねていじけて南斗に迷惑を掛けてただけだ。
その思いに苦しくなる私の背中を擦る北斗さんが笑う。
「咲都子ちゃんは俺と南斗の妹なのに面倒とか思うはずないよ。特に南斗は咲都子ちゃんが居ないとダメな男だし…。」
「だって…。」
「早月先生が言ってたろ?南斗が急に俺みたいになったって…。」
「うん…。」
「あれって咲都子ちゃんの前でカッコつけたいから、そうなったんだよ。」
「南斗が?」
「そう、笑うだろ?」
北斗さんが穏やかに笑う。
南斗のもそうだけど北斗さんの笑顔に癒される。
持田家の男の笑顔は持田先生を筆頭に人の心を落ち着かせてくれる笑顔だと思う。