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恍惚なる治療[改訂版]
第16章 仄暗い空間の中で
柳川さんが休みの日、俺は夕方彼と駅前で待ち合わせをする。
「佐伯さん」
「すみません、こんな時間に呼び出して…」
「いえ、佐伯さんからデートにお誘いしていただいて、凄く嬉しいです…ありがとうございます」
人目も憚らずにスキンシップを図ろうとする柳川さんを上手く躱して並んで歩く。
怪我が治るまで毎日俺の家に来てくれていたから、柳川さんと顔を合わせなくなって寂しくなっていた。
だから、今日こうやって来てくれて俺も凄く嬉しい…
「佐伯さん、どうしました?」
「な、何がですか?」
「表情が輝いてるように見えますよ」
「そ、そうですか!?」
「そうですよ。その顔凄く良いですね」
そう言われると、思わず出先だというのに、頰が盛大に緩みかけそうになった…
年甲斐も無くはしゃいでいると思われたく無くて、気持ちを律するように頬を叩いた。
「映画好きなんで、佐伯さんと一緒に観られるなんて嬉しいです。観に行く映画も面白そうですね」
「チケットもらったのもあるけど、柳川さんにも観てもらいたくて誘いました」
「ありがとうございます」