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唇果実
第3章 ユウリ
ある時、薬を切らしてしまい不安な数日が目前に現れた。
塗薬も飲み薬もなく、絶望的な気分に落ち込んでいたが、
その数日が変化を促した。

諦めに近い無関心が心と身体を分断したのか。
気づけば通院することもやめ、薬を断つ日々が始まり、
いつしかユウリは自らの皮膚感覚と感情を切り離すことを覚えた。
常に、というわけにはいかなかったが学習机や本に向かっているときや、
何か他にも、とにかく頭が何かに集中している時間が彼女に変化を与えた。
徐々に自分の肌に爪を立てる頻度や強さは減り、回復が損傷のスピードを上回る。
成長期、新陳代謝も飛躍的に活性化する、小学校も終わりに差し掛かる頃、
ユウリは素晴らしい肌を得ることに成功した。

欲しいものを自分自身の力で手に入れたはじめての経験だった。

その努力は勉強やスポーツといった経験的修練を経た成果を得ることに夢中な、
まわりの多くの人達にはおおよそ想像もつかない精神力の賜物で、
その価値は彼女自身が誰から教わることもなく体感し、貴重で、他人には不可侵な領域のものだった。
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