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あの時、あのBARで
第3章  再会という名のBAR
 すぐに差し出された、綿帽子をかぶる黄金色の液体を流し込んでから伊知子は、
改めてたっちゃんに訊ねてみた。
「空いてなかったんだったら、まあしょうがないけど、
 それでもど真ん中に座ってるたっちゃんて見たことない気がする・・
 なんか心境の変化とか?」
 瞳も興味津々の眼差しを向ける。
向けながら、ふと今は亡き川又さんの言葉を思い出した。
バーのカウンターに座る時、自分の居心地の良さを感じる席が自然とわかってくるって。
それが見つかると毎回同じ席に座るんだって。
一番端は、ありがちだけど心地よさを感じる人が多い。端でも、奥と手前でまた違う。
端から一つ間を置く人もいれば、真ん中の隣を選ぶ人もわりかしいる、とも言っていた。
「なんかね、今日はいつもと違う位置に座ってみたくなってさ。
 別に理由はないのよ、ただなんとなく、なんだよね」
ふうんと伊知子は唇に付いたビールの泡をぺろりと舐めながら、小さな頷きを繰り返した。


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