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嘘の数だけ素顔のままで
第2章 去勢【1】

「おかあさんいくつなんですかー」
コトブキがそんなことを訊かれたのは恐らく中学以来だったかもしれない。母親の年齢を考えようとして手掛かりすらないことにすぐ気がついた。コトブキはどもった。
すみません、よくわからないです、
「うっそー、おかあさんの歳知らないのー?」
「男ってそうよ、母親の年齢知らない人多いですよ」
「だよね、うちの旦那も知らないもん」
「そのせいで一回トラブってるし」
「わかるー、誕生日でしょ?」
「オオハナさんのおかあさんはいくつ?」
「五十三です」とオオハナタカコは言った。
クラスメイトの中ではコトブキが最年少でオオハナタカコは一番歳が近かった。
「となると、五十ぐらいか」
「おかあさんの歳ぐらい覚えときなさい、無職なんだから」
「ウチらも無職なんですけどー」と言った女のあとで典型的なおばさん笑いが起きた。
誰かが、親孝行しないとねえ、そう呟くと、皆申し合わせたようにしみじみと箸を口に運んだ。
「コトブキくんは何で結婚しないの?」
しないというか、できないというか、
コトブキがそう言った傍から声はかき消されている。女からは、あ、ごめん、なんて? と言われてしまう始末だった。
コトブキがそんなことを訊かれたのは恐らく中学以来だったかもしれない。母親の年齢を考えようとして手掛かりすらないことにすぐ気がついた。コトブキはどもった。
すみません、よくわからないです、
「うっそー、おかあさんの歳知らないのー?」
「男ってそうよ、母親の年齢知らない人多いですよ」
「だよね、うちの旦那も知らないもん」
「そのせいで一回トラブってるし」
「わかるー、誕生日でしょ?」
「オオハナさんのおかあさんはいくつ?」
「五十三です」とオオハナタカコは言った。
クラスメイトの中ではコトブキが最年少でオオハナタカコは一番歳が近かった。
「となると、五十ぐらいか」
「おかあさんの歳ぐらい覚えときなさい、無職なんだから」
「ウチらも無職なんですけどー」と言った女のあとで典型的なおばさん笑いが起きた。
誰かが、親孝行しないとねえ、そう呟くと、皆申し合わせたようにしみじみと箸を口に運んだ。
「コトブキくんは何で結婚しないの?」
しないというか、できないというか、
コトブキがそう言った傍から声はかき消されている。女からは、あ、ごめん、なんて? と言われてしまう始末だった。

