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嘘の数だけ素顔のままで
第1章 序章

選考会当日、コトブキは会場を神経質そうに見渡した。受講希望者の顔ぶれが気になった訳ではない。頭数を目で追っていたからだ。定員オーバーだ。しかも、二、三人という微妙なところだった。
席に坐っていると左隣から声を掛けられた。すみませんけど、シャーペン貸していただけますか? その中年の女というのは筆記用具の一切を持ってきていなかった。余分にあったペンを貸してあげたコトブキだが、結局、選考からは落ちた。
果たして、あの中年の女は選考に受かったのだろうか。コトブキと関わった人たちはどういう訳か幸運が訪れる。受かっただろうな、そうコトブキは思った。ペンさえ持ってきていない常識知らずのはずなのに。
数日後。コトブキはハローワークにいた。もう一度職業訓練を申し込みたい相談をする為だった。職員の男からは、すぐには無理だと言われた。どこかで一年ほど働いたあとにまた申し込みをしてください、ということであった。
コトブキは、そのあとの三年間を警備保障会社で交通誘導員として働いた。シャーペンを忘れた中年の女のせいにするつもりはないが、いやな思い出が随分と増えたことは間違いなかった。
というのも、その警備保障会社がひどくブラックだったうえに、交通誘導員にまるで人権がなかったからだ。
席に坐っていると左隣から声を掛けられた。すみませんけど、シャーペン貸していただけますか? その中年の女というのは筆記用具の一切を持ってきていなかった。余分にあったペンを貸してあげたコトブキだが、結局、選考からは落ちた。
果たして、あの中年の女は選考に受かったのだろうか。コトブキと関わった人たちはどういう訳か幸運が訪れる。受かっただろうな、そうコトブキは思った。ペンさえ持ってきていない常識知らずのはずなのに。
数日後。コトブキはハローワークにいた。もう一度職業訓練を申し込みたい相談をする為だった。職員の男からは、すぐには無理だと言われた。どこかで一年ほど働いたあとにまた申し込みをしてください、ということであった。
コトブキは、そのあとの三年間を警備保障会社で交通誘導員として働いた。シャーペンを忘れた中年の女のせいにするつもりはないが、いやな思い出が随分と増えたことは間違いなかった。
というのも、その警備保障会社がひどくブラックだったうえに、交通誘導員にまるで人権がなかったからだ。

