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嘘の数だけ素顔のままで
第7章 痴漢【2】

コトブキはカーナビの指示通りに次の信号を左に曲がった。ここから先は初めての道路だった。
初めての坂をのぼって初めてのトンネルをくぐって初めての国道を飛ばして走った。そして、迷い込んだ閑静な住宅街をぬって走っているうちにカーナビは、目的地に着きました、とそう言った。
ここが……雑居ビルをフロントガラス越しに見上げてコトブキは思った。駐車場はあるようだ。二十台ほど停められるスペースに、車は一台もなかった。
駐車場から歩いて出るときに茂木楽器店・駐車場という看板を見つけた。看板は舗道沿いの植木にほとんど隠れていた。
雑居ビルの入口は人ひとりがすれ違える程度の幅広でシャッターが上げられていた。薄暗い通路に音楽が聴こえていて、音のする方に歩いて行くと茂木楽器店という印字が自動ドアに緑色で書かれてあった。
店内に客の姿はなかった。レジカウンターに店員らしい男が一人いて、男は長髪で髭を生やしていて両腕と首にはタトゥーがあった。歳は二十代後半にも見えたし四十代にも見えた。
男は、やがてコトブキのことに気がついたがスターバックスのロゴの入った飲み物を口にしただけだった。
初めての坂をのぼって初めてのトンネルをくぐって初めての国道を飛ばして走った。そして、迷い込んだ閑静な住宅街をぬって走っているうちにカーナビは、目的地に着きました、とそう言った。
ここが……雑居ビルをフロントガラス越しに見上げてコトブキは思った。駐車場はあるようだ。二十台ほど停められるスペースに、車は一台もなかった。
駐車場から歩いて出るときに茂木楽器店・駐車場という看板を見つけた。看板は舗道沿いの植木にほとんど隠れていた。
雑居ビルの入口は人ひとりがすれ違える程度の幅広でシャッターが上げられていた。薄暗い通路に音楽が聴こえていて、音のする方に歩いて行くと茂木楽器店という印字が自動ドアに緑色で書かれてあった。
店内に客の姿はなかった。レジカウンターに店員らしい男が一人いて、男は長髪で髭を生やしていて両腕と首にはタトゥーがあった。歳は二十代後半にも見えたし四十代にも見えた。
男は、やがてコトブキのことに気がついたがスターバックスのロゴの入った飲み物を口にしただけだった。

