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嘘の数だけ素顔のままで
第7章 痴漢【2】

扉が開いて通路に出た。埃っぽくて地上一階の通路より薄暗かった。店が営業している様子はない。それにテナント募集中という感じでもなくて通路には段ボールや販促品のポップの数々、机、スチールラック、マネキンが三体、
皮のジャンパー、開いたままの金庫、壁掛け時計、VHSのビデオデッキ、女性週刊誌、パチンコ雑誌、変色した軍手一枚、それとモップやパイプ椅子が無造作に壁に立てかけてあり物置に使っているといった感じだった。
コトブキはエレベーターに戻った。地上二階、三階、四階の押しボタンを順に指差して迷った。ほとんど諦めに似た徒労感で胸がいっぱいだった。表情のない顔で四角いボタンを見つめていると……このボタンは……
地下二階に続く押しボタンがある。「2」という数字こそ入っていないが、ボタンがあるということは……コトブキは興奮して数字のないそのボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まり、下に降りていく感覚がからだに伝わってきた。ただし地下二階ということは嘘だと思った。地下四階とか五階とかそれくらいの高さを降下している気がした。
エレベーターの扉が開いた。
目の当たりにしたのは WELCOME という青色のネオン管だった。こういう場合、目の当たりという言い方は本来正しくないのかもしれないが、通路は真っ暗闇でその青色のネオン管だけが夜の海に漂う豪華客船のように浮かびあがっていたのだった。
コトブキは壁際を手探りしながら歩いた。
皮のジャンパー、開いたままの金庫、壁掛け時計、VHSのビデオデッキ、女性週刊誌、パチンコ雑誌、変色した軍手一枚、それとモップやパイプ椅子が無造作に壁に立てかけてあり物置に使っているといった感じだった。
コトブキはエレベーターに戻った。地上二階、三階、四階の押しボタンを順に指差して迷った。ほとんど諦めに似た徒労感で胸がいっぱいだった。表情のない顔で四角いボタンを見つめていると……このボタンは……
地下二階に続く押しボタンがある。「2」という数字こそ入っていないが、ボタンがあるということは……コトブキは興奮して数字のないそのボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まり、下に降りていく感覚がからだに伝わってきた。ただし地下二階ということは嘘だと思った。地下四階とか五階とかそれくらいの高さを降下している気がした。
エレベーターの扉が開いた。
目の当たりにしたのは WELCOME という青色のネオン管だった。こういう場合、目の当たりという言い方は本来正しくないのかもしれないが、通路は真っ暗闇でその青色のネオン管だけが夜の海に漂う豪華客船のように浮かびあがっていたのだった。
コトブキは壁際を手探りしながら歩いた。

