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嘘の数だけ素顔のままで
第9章 孤立【1】

「受講を申し込むときに職員の方から説明があったと思うけど……」
コトブキから完全にマウントを取った『先生』はとにかく饒舌で、しかもタメ口になっていた。長話を要約すると、欠席するときは八時十五分から八時三十分の間まで連絡をしろということだった。
授業の時間を奪われたクラスの皆から溜め息が聞こえだした。『先生』は立てた人差し指を、こっち来て、という風に動かした。
「この用紙にボイン捺して」
『先生』は教壇のうえに朱肉を出した。
ボインですか?
「どうせハンコ持ってないだろ」
コトブキは拇印を捺した。教壇のうえにはティッシュの箱がひとつ置いてあったが、『先生』は、あといいよ、とだけ言った。
席に戻ったあと、ヒタチノゾミがティッシュをくれるかもしれない、そうコトブキは思ったが、その期待ははずれた。コトブキは朱肉の付いた指をジャケットで拭った。
結局、一時間目の授業は十五分程度しかできなかった。教室の雰囲気は最悪。十分の休憩時間が始まると皆ネットを見たり、スマホをいじったりしてひどく静かだった。
今ヒタチノゾミに話しかけたりしたら注目されそうな気がした。しかし、このままスマホを返さない訳にいかない。コトブキはメールボックスを立ち上げた。
コトブキから完全にマウントを取った『先生』はとにかく饒舌で、しかもタメ口になっていた。長話を要約すると、欠席するときは八時十五分から八時三十分の間まで連絡をしろということだった。
授業の時間を奪われたクラスの皆から溜め息が聞こえだした。『先生』は立てた人差し指を、こっち来て、という風に動かした。
「この用紙にボイン捺して」
『先生』は教壇のうえに朱肉を出した。
ボインですか?
「どうせハンコ持ってないだろ」
コトブキは拇印を捺した。教壇のうえにはティッシュの箱がひとつ置いてあったが、『先生』は、あといいよ、とだけ言った。
席に戻ったあと、ヒタチノゾミがティッシュをくれるかもしれない、そうコトブキは思ったが、その期待ははずれた。コトブキは朱肉の付いた指をジャケットで拭った。
結局、一時間目の授業は十五分程度しかできなかった。教室の雰囲気は最悪。十分の休憩時間が始まると皆ネットを見たり、スマホをいじったりしてひどく静かだった。
今ヒタチノゾミに話しかけたりしたら注目されそうな気がした。しかし、このままスマホを返さない訳にいかない。コトブキはメールボックスを立ち上げた。

