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嘘の数だけ素顔のままで
第9章 孤立【1】
「元気ないですね」

 昼飯の時間、女は口々にそう言った。『先生』ちょっとしつこかったよね、そう言ってくれる女もいた。この様子だと、オオハナタカコはあの一件を黙ってくれているようだ。コトブキは心の底から感謝した。


 ただ、オオハナタカコは一言も喋りかけてきてはくれない。コトブキの話題があがっても話に入ってくることはないし、コトブキの方を見ようともしなかった。一昨日までどういった調子でオオハナタカコと話していたのかコトブキは思い出せなくなった。

 代わりに思い出したことといえば、小学校のグラウンドであの日突き飛ばした女の子が翌日他人のような目をしていたことだった。コトブキの中でその女の子とオオハナタカコが重なって見えた。


『先生』と顔を合わせたくなくて食後の一服は我慢した。メールボックスを立ち上げた。ヘビースモーカーが煙草を取り上げられてしまうと急に時間を持て余した。


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