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つねる
第1章 つねる
 臀部の痛点は疎らだと聞いたことがある。じゃぁ遠慮せずに腕を振り下ろしていいか、と言えばそうではない。それが快感なのか痛みなのかは人に寄るところだから、まずは音を重視する。事前にもみほぐした尻をどれくらいの強さで叩けばいいかは経験の問題でしかないが、彼女が少し痛いくらいに腕を振り下ろすべきなのはサディスト的な何かより女性を支配するような、それは安心してよがってくれてかまわないという挨拶のようなものにする必要があるわけだ。だから、いつも最初の一振りは、薄暗いところで紙コップに牛乳を注ぐような不安を覚えていた。とはいえ、一発目をしくじったから終わりかと言えばそうでもない。焦らずに二度目の力加減を考えて腕を振り下ろすことに集中する。楽器のチューニングでもするように彼女を楽しめるくらいの余裕をもてなくてはいけないのだよ、と後々自分を叱ることは未だ多い。
 彼女とは初めてのホテルだったから、スカートとタイツだけを脱がせてから尻を突き上げさせた。最初は上げられるだけあげてしまい、皮を張り痛点が広がってしまう。だから黒のショーツの力を抜くようにいうところから説明をする。聞いている限り彼女は欲求ほど叩かれた経験はない。妄想を超えられないとしても近しい経験こそがこの関係の続きだと考えればいつもよりは気をつかう。薄い身体についた細い四肢と髪の長い小さい顔は、私に酷く刺さっていたからだ。一通り彼女の興奮を煽ったら、薄い唇を指でこじ開けてから舌をつまみ、唾液を飲み込ませないようにする。それから、顎がどれくらい耐えられるか調べるところから始めたい。
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