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硝子の初恋
第12章 踏み出す勇気
プールの鍵を返して外に出た頃には、すっかり夜も遅くなっていた。

「遅くなっちゃったね」

「送ってく」

自転車置き場までの道のりを、当たり前のようにまゆなの隣に並んで歩く高臣。

「ありがとう」

まゆなは、久しぶりに幸せな気持ちに包まれる。

「まゆ、最近帰りにあの公園通らないだろ」

「え?」

「俺、時々あの公園で待ってた。まゆ通んねぇかなぁって」

高臣と別れてから思い出すのが辛くて、まゆなはいつも帰りに寄ったあの公園には近寄らなかった。

まさかそこで高臣が自分を待っていたとは……。

「スっ……ストーカー?!」

「お前なぁ!」

照れ隠しについそんな事を言った後にハッとした。

「そういえば……最近は別の道で帰ってたんだけどね、途中のコンビニで、いっつも私の事をじーっと見てる人がいて……」

「え? コンビニ?」

初詣の時に見た男を思い出し、血の気が引く高臣。

「最初は私も自意識過剰とか思ったよ? でも毎日いるし、目が合っても逸らさないし、私が見えてから通りすぎるまでじーっと見てるの」

初詣の時も、何を言って来る訳でもなく、何をしてくる訳でもなく、ただまゆなを見つめていたあの男。

「この前なんて真後ろに立ってて……しかも名前まで知ってたし……またサイトにアドレス載せろとか、なんか気持ち悪くて……」

「はぁ?! 何でもっと早く言わねぇんだよ!?」

まゆなとその男が接触したと聞き、高臣は慌ててつい大きな声を出していた。
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