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硝子の初恋
第15章 それぞれの想い
「ねぇ、眞斗……」

まゆなは小声で高臣に話し掛ける。

「沙有里と侑吾先輩がくる前に言いかけてた言葉…なんだったの?」

一瞬考えを巡らせた高臣。

「あー…文化祭の前日にさ、小長井先輩に言われたんだ。まゆに告白するからって」

「え?」

「んで、なんかすげー焦って、すげームシャクシャした。俺さ、自覚してなかったけど、その頃にはもうまゆの事好きだったんだろうな」

そう言って笑う高臣。顔を赤らめて俯くまゆなをぎゅっと抱き締める。

「まゆと付き合う前の俺はどうしようもないガキで、だから付き合い始めの…動機とか…不純だけどさ、今はこうして一緒に居られてマジで幸せ……」

まゆなの上昇する体温と悦びを伝える様な心音が、抱き合う高臣の身体に伝わり心地良さに瞼が重たくなっていく。

「私も、すごく幸せ……」

まゆなの言葉に、少しだけ口元を緩めた高臣からスースーと寝息が聞こえ始めた。

高臣の厚い胸板に耳を寄せれば、ドクドクと力強く規則正しく脈打つ心音が聞こえる。


薄い硝子の上に居る様な脆く儚げだった初恋。

足元の硝子を分厚く頑丈なものへと変えてくれたのは、目の前にいる彼。そして、友達…家族…。


「眞斗……これからもずっと一緒に居てね……」

まゆなはゆっくりと瞳を閉じた。










"硝子の初恋"完(2013.10.9)
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