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S級有害図書
第2章 「森下絵里の場合」
 始業のチャイムが鳴り、閉められる校門をすり抜けるように入ってくる絵里。友人たちが声をかけてくる。
「絵里、今日も遅刻ギリギリなの?」
「昨日の宿題に手こずっちゃってさ」
昇降口で靴を履き替えようと下駄箱を開けると、たくさんのラブレターが絵里の足元に散らばる。
「さすが学園のマスコットガール。もてますねぇ」
「いやあ、それほどでも」
友人達と笑いながら、階段を上って行く絵里。

 放課後、野球部の部室で数人のユニフォームを着た野球部員達がスマホでなにやら映像を見ている。
「こういうの、ゾクゾクするな」
「知ってる女だと、なおさらだな」
「惜しかった。もう少しで全部見えたのに」
 突然、ジャージ姿の絵里が入ってくる。慌ててスマホを隠す部員達。
「ノックもなしに急に入ってくるなよ」
「何言ってるのよ。もう練習の時間でしょ。掃除するんだから、行った行った」
 男子部員達を部室から追い出す絵里。
「ったく、県大会も近いってのに。あれ?」
 絵里、床に落ちているスマホに気づき、拾い上げる。映し出された画面を見た絵里の顔から、血の気が引いていく。
「・・・何これ?どういうこと?」
膝がガクガクと笑い出し、ヘたり込む絵里。スマホに映し出されているのは、絵里の裸の映像なのだ。一糸纏わぬ全裸の絵里が映し出されている。
「あ〜あ、見ちまったのかよ」
 野球部のキャプテンである土屋毅が、開いているドアの向こうから冷たい笑顔で絵里を見つめている。毅はキャプテンであると同時に、生徒会長も務める自他共に認める優等生だ。
「こ、これっ!」
「返せよっ!」
 毅、絵里からスマホを乱暴に取り返す。毅の後から部員達がぞろぞろと入ってきて、絵里を取り囲む。男達の無言の圧力が絵里を震え上がらせる。
「バレちまっちゃしょうがねえな」
「みんなでマネージャーの裸、鑑賞してやってたんだけどな」
「お前、案外いい身体してるんだな」
 部員達全員がスマホを取り出して、絵里に見せる。全員のスマホに絵里の裸が映されている。
 頬を真っ赤にして怒鳴る絵里。
「いやっ、消してっ、消してよっ!」
「そうだな。条件次第で消してやってもいいぜ」
 毅が冷たい笑顔で近寄り、絵里に耳打ちする。
「・・・俺を満足させて見ろ。意味はわかるよな」
「・・・そんな」
「嫌なら別にいいぜ。けど拡散される前に消した方がいいと思うぜ」
「・・・」
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